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木の家具と暮らす ~私たちのKAGURA STYLE~ #09

2022.7.17

 

 

建築家 × KAGURA コラボレーション実例【その6】


 

 

建築家の作る空間。

それは閃きやセンスだけではなく、膨大に積み重ねられた個人的な体験や、ノウハウに裏付けられた手作りの作業によって生まれるものづくりに他なりません。

同様に、丁寧な手作業による上質なものづくりを目指す家具蔵の仕事が建築家、その空間と響き合い、見事に形となった個性豊かなインテリア実例を、建築家へのインタビューと共にご紹介します。

 

遠藤誠建築設計事務所


 

 

遠藤 誠さんは日本大学大学院修士課程修了後、坂倉建築研究所東京事務所で15年間設計に携わり、その後1年間かけて世界の建築を見る旅を敢行。

2009年に遠藤誠建築設計事務所を設立し、「田園都市建築家の会」メンバーとしても活躍されています。

 

いつも周辺までしっかり作り込むという模型。

 

正方形の部屋を視覚的にエリア分けするため、幅3メートルの長いダイニングテーブルをオーダーし、「アームチェア ゼン」と「チェア ゼン」をどちらもウォールナット材で配置しています。

 

在るべくしてそこにある建築を 


 

 

-遠藤さんは大学を卒業されてから、ル・コルビュジェに師事したことでも知られる坂倉準三さんの事務所に15年在籍されていたそうですね。

はい。実は僕がもともと大学で建築を専攻したのも、坂倉準三が設計した神奈川県立近代美術館を見て、建築の面白さを感じたのが最初だったのです。

大学時代は他にもたくさんの面白い建築に出合いましたが、デザインの方向性や人となりが合うのではないかとたまたま大学の先生に紹介されたのがきっかけでした。

 

-その後、1年間休まれてから独立されたとか。

当時、建築業界には「誰もやってないことをやろう」という派手な傾向があって、それが僕には鼻についたんです。

スイスのヘルツォーク&ド・ムーロンは代表的で、その後はストイックにシンプルを目指すミニマリズムもブームになって…。

そういう建築は格好良いと思うし、とても好きなのですが、自分のやりたい方向とは違うな、と。

僕は建築って、住宅に始まって住宅に終わるものだと思っているのですが、そういうとんがった建築は自分にとって心地いいというより緊張してしまうし、住みたいとは思わないですよね。

でも、その中でも鼻につかない建築が世界にはあって、それを独立する前に1年かけて見て歩いたんです。

 

-具体的にはどんな建築だったのですか?

ひとまずはフィンランドのアルヴァ・アールト、アメリカのルイス・I・カーン、イタリアのカルロ・スカルパ、メキシコのルイス・バラガンの4人。

それぞれに奇をてらうことなく、非常にローカルなフィールドで活動した建築家です。

もちろん個性的なのですが、それは持って生まれたものや育った土地の風土が体にしみついてできたものですよね。

本来個性って、出そうと思って出すものではなく、そういうふうににじみ出てしまうものだと思います。

 

-今の遠藤さんの建築にも通じていますね。

僕は、クリエイトなんかしなくてもいいと思っています。

その代わり、その場所、その人にとって在るべき家の姿があるのではないかと。

僕らがしているのは生み出す作業ではなく、それを探す作業ですね。

その人にとって、この場所に一番いいと思うものなら、すごく地味で平凡なものであっても良いのです。

だから、大事なのは創造力よりも想像力。

お施主さんの話は色々聞きますし、その土地にはしっかり足を運んでイメージをいただきます。

敷地の周りだけじゃなく、駅からどうやって歩くかとか、風がどっちに抜けるかとか、いろいろ。

人と一緒で、土地が持っている雰囲気というものもありますからね。

 

無垢の質感で生まれ変わった住空間(事例1:N邸/東京都)


 

 

坂倉建築研究所時代に設計した分譲マンションを中古で購入し、同じ方にと遠藤さんにリフォームを依頼したNさんは、建築に精通していて話が早かったそうです。

築後10年近かったが、プランはとても気にいってそのままに、当時できなかった無垢のフローリング、クロスだった天井や壁の塗装、水まわりのみ一新され、空間に見合う家具が配置されました。

無垢のフローリング、壁や天井の塗装で、質感の印象は大きく変わり、この空間がもともと持っていたポテンシャルが上手く引き出されたとも言えるリノベーションとなりました。

 

その土地、その家主に寄り添う家(事例2:T邸/神奈川県)


 

目の前が公園、両脇は住宅が隣接しているという立地条件から、2階をワンフロア使って公園側から大胆に採光したリビングダイニングをメインの空間にしています。

1階には家族の寝室を並べ、メリハリの効いた設計の個室となりました。

出入り口も引き戸で構成することによって空間を無駄にせず、オープンにして自由に寛げる仕様となっています。

 

遠藤さんが独立後最初に設計した鎌倉の家。

「お尻が喜んでる!」と即決した「アームチェア ヴォーグⅡ」とダイニングテーブルは家に合わせて新調しました。

降り注ぐ自然光と、踏面と蹴込みが同じ面材で構成される「稲妻階段」によって、自然と2階リビングに誘われる玄関ホールは、この住まいを訪れる人にこれからが出会う空間への期待感を高めてくれる建築家からのプレゼント、とも言えます。

 

 

 

 


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