木の家具と暮らす ~私たちのKAGURA STYLE~ #12
2022.7.25
目次
建築家 × KAGURA コラボレーション実例 【その10 ~前編~】
建築家の作る空間。それは閃きやセンスだけではなく、膨大に積み重ねられた個人的な体験や、ノウハウに裏付けられた手作りの作業によって生まれるものづくりに他なりません。
同様に、丁寧な手作業による上質なものづくりを目指す家具蔵の仕事が建築家、その空間と響き合い、見事に形となった個性豊かなインテリア実例を、建築家へのインタビューと共にご紹介します。
暮らしを彩る家具選びの大切さを伝えたい
奥貫健治さんは早稲田大学法学部卒業、ハウスメーカー、桑沢デザイン研究所スペースデザイン科、設計事務所を経て家具蔵企画設計部に勤務。
埼玉県環境建築住宅賞、県産木材住宅コンクール優秀賞、永田・伊礼設計講座コンペティション最優秀賞。
設計で一番大切なものは「小さな必然」の積み重ね
-奥貫さんは設計を依頼されたとき、何を一番に考えますか。
私は、住まいの設計とは「小さな必然」の積み重ねだと思っています。
何か大きなテーマや挑戦があるのではなく、その土地の風土や細かな周辺環境、住まい手の潜在意識にこそあるような想いを丁寧にすくい上げ、求められる形を探すことです。
しかしそのような「必然」に行き着く為には、なぜそうするのかを良く考えなければなりません。
間取りもそうですが、なぜ屋根は板金でなく平瓦なのか、なぜ家が雁行しているのか。
窓の位置や寸法までじつに様々なことを検討する中で小さな選択を繰り返し、最後にはしっかりとした骨格を持つような空間をめざしています。
-潜在意識にある想いとはどのようなものですか。
人間が心底から感じる気持ち良さや幸せは、実は簡単に言葉では表現できないものではないかと思うのです。
「広いリビングや人の集まるキッチンがほしい」というのは確かに求めていることかも知れませんが、広さにも人の集まりにも様々な性格があり数値や単純な配置では測り知れない「設計の妙」があります。
プランニングの具体的な作業としては生活シーンごとに、居心地の良い小さな場所や時間の断片をイメージし、糸を紡ぎ、布を織るようにまとめていきます。
そしてそこには生活の道具である家具の存在、その具体的なイメージも当然必要となります。
家具があってはじめて家は「住まい」となる
-それは家具蔵の提案する「家具から考える住まいづくり」ということと関係しますね。
これは新築やリフォームだけでなく、今ある空間をもっと心地良いものにしたい、と考える方にも当てはまりますが、自分の理想をイメージするには何か拠り所が必要で、その一つが家具です。
空間に馴染む家具や道具があって、始めて家は「住まい」となり、生活は「暮らし」として豊かに広がります。
それは家具を全て造り付けるとか、置き方をきっちり決めてしまうというのとは違います。
季節による光の入り方や風向きの変化、家族の成長で柔軟に家具の配置を変化させて暮らしを楽しむ余白を含め、本当に必要な家具と間取りを考える。
確かに難しい作業ですがきっと答えはあります。
-家具を考えるということは、インテリアだけの話しではなく、暮らしの本質までつながるという事ですか。
はい。
たとえば椅子一脚で空間は変わります。
その椅子が本当に美しく、座り易くて思い出の詰まったものであったら、そこはどんな豪華ホテルの一室よりも心地良い自分の居場所になる。
これから家づくり、空間づくりをされる方には、ぜひその「人生の一瞬一秒を共にする喜びに相応しい家具」を見つけてほしいと思います。
私の部屋は4畳しかありませんが、窓辺に15年前に購入した家具蔵の椅子が一脚あり、そこに木漏れ日が射し、夜はスタンドの灯りが照らすのを見て、いつも豊かな気持ちになります。
そんな小さな幸せを、これから出会う皆さんの人生にも散りばめられたらいいなと思って仕事をしています。
チェリーの大テーブル&キッチンを家の中心に(金澤邸/埼玉県)
家具蔵が提唱する「家具から考える住まいづくり」を実践したのは、埼玉県の工務店「カネザワ」の金澤会長夫妻。
クオリティの高い家具蔵のプロダクトに惚れ込み、無垢材のダイニングテーブルとキッチンを家の中心に据える家の設計を依頼しました。
8人のお孫さんを含め計17人の家族と社員の集まり以外にも来客の多い金澤邸では大きなダイニングテーブルは必需品だったといいます。
奥さまの要望はリビング・ダイニングと一体になった木のオープンキッチン。
木目の美しさもさることながら「見せる・隠す」のバランスが良く、みんなで料理を楽しめるレイアウトになり「長年の夢が叶った」と大満足でした。
そのほか、幅24センチ厚さ3センチという杉の床材、貴重な杉の芯材をふんだんに使ったテラス、檜の大黒柱、さらには珪藻土の壁と、自然素材へのこだわりも気持ちがいい空間になっています。
金澤さんはお仕事柄、お客さんの家はたくさん見てきたはずなのに、「自分の家については不思議とイメージが沸かなかった」とのこと。
それが結果的に「100点満点」の住まいになったのは「家具から具体的に自分たちの暮らしをイメージできた」からだといいます。こうして家族や友人たちが集う、理想の暮らし、家具蔵の家具に彩られた心地よい木の住まいが実現しました。
寝室と和室によってコの字に囲われたリビング外のデッキテラスは波の穏やかな入江のイメージ。室内に落ち着きを与え、山方向への風景を切り取る効果もあります。
天窓からの静かな光が注ぐ玄関ホール。照明を仕込んだベンチは軽やかに床から浮かせました。
30人分の料理でも手際よく調理が進む機能的なキッチンになっています。背面収納との距離や高さも使い勝手を左右する大切な部分です。
金澤さんご夫妻。40年前から材木商と工務店を経営してきた、家づくりに関するプロ中のプロでもあります。仕事を通じて知り合った家具蔵・奥貫さんのセンスに惚れて、設計を依頼されました。土地選びの段階から長い時間をかけて完成させた住まいは、「過ごす時間が長くなるほどその良さが判ってきました」とのことです。
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