「建築は言葉の宝庫」その2
2018.7.25
普段から会話の中で使用する表現や何気なく使っている言葉。
これらには建築の技法やそれに由来するものがたくさんあります。
別のコラムにも掲載しているものの、その第2弾。
誰かに教えてあげたくなる、もしくはご自身の住まいで気付くことがあれば…。
そんな思いでご紹介していきます。
建築にまつわる慣用句や単語はまだまだいっぱい
「建前」
誰が言ったか「ホンネとタテマエ」。
タテマエは「建前」と書き、これは表立った方針、表向きのものを意味します。
概してあまり良くない意味で使われがちですが、元々は家を建てる際の基礎の上に柱・梁・棟などの骨格を組み立てる「上棟式」のことで、大工さんたちはこれを「建前」というのです。
そこで建前が終われば大体どんな家が出来上がるのかが見えてくるため、「建前」は「表立った方針」という意味となりました。
本来はおめでたい意味もある、良い意味の言葉なのです。
「束の間」
ほんのちょっとの間、という意味合いで使われる言葉ですが、この「束」とは一般的に短い柱のことを意味します。
辞書などでは4本の指で握った長さとあることが多いですね。
これにより「わずか」「少し」という意味を表すようになりました。
「こけら落とし」
「こけら」とは、木材を削った際に出てくる切りくずのことです。
昔の芝居小屋の屋根は板葺きでできていたので、芝居小屋の新築や改築工事の最後に、この「こけら」を払い落としたことから、芝居小屋の完成後初めての興行を「こけら落とし」というようになりました。
転じて、現代でも劇場や映画館、スタジアムなどがオープンする際にはこの言葉を使うようになったのです。
「羽目を外す」
「いや?、昨日はハメを外し過ぎちゃったよ…」
そんな言葉をたまに耳にしますね。
皆さんご存知のように、これは調子に乗り過ぎたり度を超えてしまっていたりすることを指します。
このハメ、漢字では「羽目」と書き、これには2つの意味があります。
一つは板を並べて張ること、もしくは張ったもので綺麗に並べられた羽目を外す=台無しになってしまうことからこの表現が生まれました。
また、馬の口にはめる縄も「羽目」といいます。
この羽目を外すと馬が暴れ出すことからこの表現が生まれたという説もあるのです。
「大黒柱」
これは皆さん、ご存知の方も多いでしょう。
家の中央にあって最初に建てる柱のことです。
ここから転じて、一家や団体の支えになる人・中心人物を指すようになりました。
ことわざや慣用句でも建築に由来するものが
釘や畳に障子…。
日常的に目にし過ぎて、もはや日用品ともいうべきものですが、これらも立派な建築部品であり用語です。
こうしたものを使ったことわざや慣用句もたくさんあります。
そんななかでも「釘」にはたくさんの表現を見ることが出来ます。
釘と言えば丸い形状のものをイメージしますが、江戸時代までは四角い形状の和釘が使われていました。
そんな釘を使った言葉は以下のようにあります。
「糠に釘」
糠のような柔らかいものに釘を打っても意味がないことから、手応えの無いこと・効き目がないことを意味します。
「豆腐にかすがい(鉄製の木材を留めるもの)」も同じ意味合いです。
「釘が利く」
明確な効果があることを意味します。
「釘が応える」とも。
「釘を刺す」
予め念を押す場合に使う表現ですが、仕口や継手だけで部材を接合していた建築に念のため釘を入れることから生まれた言葉です。
「釘の裏を返す」
裏側に突き出た釘の先を曲げて抜けないようにすることか念を押すことのたとえになりました。
釘は「念を押す」という意味が多いようです。
「家売れば釘の価」
家は建てるのにお金が掛かりますが、売る時には釘程度の価格になってしまうもの、という意味です。
古くから日本では新築が尊ばれてきたのがわかります。
別のコラムでも取り上げているように、このあたりがヨーロッパの国々との違いで、ようやく日本でも最近になってリノベーションなどで既存住宅の価値を上げる動きが盛んになってきています。
「焼け跡の釘拾い」
家が火事で焼け落ちたようなあとで釘を拾い集めてもどうにもならないことから、散財したあとで細々と倹約する様を皮肉る例えです。
かるたの中にも建築が
皆さんも子供のころに、もしくはお子さんが遊びや勉強に使う「かるた」。
競技かるたなどは大人も子供も関係なく、根強い人気を誇ります。
このかるたにも江戸かるたや関西などで親しまれてきた上方かるたなどがありますが、その上方かるたで使われる表現の中にも建築由来のものが活きています。
「鑿(ノミ)といえば槌(ツチ)」
鑿を打つには槌が必要です。
転じて、あることを頼むとそれに必要なものも同時に持ってきてくれるような、気の効く様を例えた表現です。
「壁に耳あり障子に目有り」
有名な表現です。
どこでだれが見ているかわからない、という言葉。
「軒を貸して母屋取られる」
一部を貸しただけなのに全部をとられてしまったり、恩を仇でかえされてしまうこと。
いかがでしたか?
こうして見ると驚くほどたくさんの表現が建築に由来しています。
それだけ住まいや建築は私たちの身近にあり、暮らしに深くかかわっているものということでしょう。
そうそう、こんな言葉も建築に由来するもの。
「笑う門には福来る」
笑うことは何かとポジティブなことが多いもの。
どんな場合でも笑って過ごせる、そんな気持ちと場所があるといいですね。
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