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イギリスの住宅事情とそこから学ぶもの

2018.6.28

以前、このコラム内で「日本と欧米の住宅事情の違いを知る その1」として、欧米の住宅は古いものが多く、それを大事にしながら暮らしていることをご紹介しました。

特にイギリスは住まいだけではなく、自然や人、動物すべてが溶け合うようにそこにある国です。

そんなイギリスの住まいのあり方はどうなっているのでしょうか?

日本も行政が中心になって、住宅の長寿命化に向けてその普及活動を始めています。

例えばあるデヴェロッパーが推し進める「200年マンションプロジェクト」は超長期住宅先導的モデル事業の第一号に選定されています。

マンションの寿命を200年以上にするために、どう建てるか、そしてどう住まうか、あるいは住むことを支援するかなど様々な観点からの取り組みが進められているのです。

今回はいくつかの例を見ながら我々日本人の暮らしや住まいに関するヒントを見つけてみたいと思います。

イギリス 古い町並み

 

歴史を重ねて美しくなるイギリスの家


イギリスの人々は家を「永遠に続くもの」と考えています。

その為、前回のコラムで話題にしたような「耐用年数」という概念がありません。

気候や地震の有無といった条件の違いはあり、ものには寿命があることは彼らもおおいに知っていますが、

「この家は何年持つだろう?」

と不安に思うことはないのです。

「劣化したらメンテナンスを行う」のが住まいについての彼らの認識であり、考え方です。

イギリスの人々にとって家は「文化」です。

持ち家といえども、先人から受け継ぎ未来へと繋げる、もしくは自分が創り将来誰かが引き継ぐ、そんな感覚と責任感を持っています。

世代を越えて継承を可能にする大きな要因として、よい家は築年数に関係なく評価されることが挙げられます。

彼らは自分の家を改修し、メンテナンスすることで、暮らしを快適にするだけでなく、資産価値も上げるのです。

イギリスの家はこのように育てられ、美しくなっていきます。

イギリス人は一生に何度も家を住み替えます。

家族の形態が変わるとそれに見合った大きさの家に移るのです。

空き部屋ができればうまく運用するよう工夫します。

使わない部屋は人に貸すなど、常に「生きた家」にするための営みを心がけているのです。

家は人に活用されてこそ活きるもの。

歴史を重ねた家の美しさは歴代の住人達の「思い出の地層」にほかなりません。

 

自分たちで改修して暮らすスタイル


外観は建築当時、それこそ100年以上も前のままという住まいでも、内部は間取りや設備などの改修が繰り返されていることが多いのがイギリスの住まいの特徴です。

その時代の住人が手を入れ、時代に沿った改装がなされることで住まいが長く引き継がれるものになっていき、資産価値も上がっていきます。

前回もお話ししましたが、100年、200年と古い家ほど価値がある、というのがイギリスの考え方です。

使われている建材の質にも違いがあるのですが、DIYが根付いているイギリスでは、自分たちで家をメンテナンスして良い状態を保つということを、日常的にやっています。

買ったまま、建てたままで住み続けるという人はほとんどいないようです。

これは一つに、イギリス人の「家はわが城」の精神があり、キッチンのフロアタイルを張り替えたり、新しい壁紙を貼ったり、バスタブを新調したりとしながら、マイホームを自分色に住みやすく塗り替えるということが人生の楽しみになっているからです。

そのような過程を経て、家が常に手入れされ続けているというのも、家が長持ちする理由と言えます。

イギリス 古い邸宅

 

空き部屋をつくらずに活かすスタイル


イギリスの一戸建ては上階にベッドルームとバスルームを設ける傾向があります。

また、家族の形態によって引っ越すことが多いとお話ししましたが、皆がみな、そうではありません。

そうした人たちは空いた部屋は人に貸す、それも高齢の女性のお父様を迎え入れたり、親に恵まれない子供を一時預かったりというような利用方法が多いらしいのです。

そうした環境の中で無駄になる空間が少なくなり、「生きた」家になっていくのです。

 

日本の生活スタイルとの違い


ここまで見て、日本の住宅事情とはまた違ったイギリスのそれが見えてきました。

どちらが良い・悪いということをここでお話するのはひとまず避け、大事なことは「ものを大事にする」という精神であり、そうした考えが根付いているかどうかだと考えます。

我々家具蔵は家具をつくり、皆様にご案内していますが、長く使えるものをということで無垢材・無着色にこだわり、工場直営だからこそ、メンテナンス体制も万全に整えたものとしています。

 

家具と住まい。

密接に関係するものではありますが、どこか切り離して考える方も多いのもまた事実。

そのなかで家具を通して、日本人が本来持っていた「ものを大事にする」という考えを引継ぎ、継承することも我々家具蔵が行っていきたいことの一つです。

そして、住まいという家族や社会をつくるうえでとても重要なものを大事に長く保つ。

そんなこともお話しできていけたらと考えております。

無垢材家具 無垢材チェア 無垢材スツール ウォールナット

 

参考文献

エクスナレッジ「建築知識」2018年7月号「イギリスの美しい住宅図鑑」山田佳代子 文と絵

 

 


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