日本と欧米の住宅事情の違いを知る その2
2018.6.19
「家」。
家族・個人・もしくはパートナーや友人などが生活の拠点とするものであり、その在り方も様々です。
国が異なれば文化が異なるように、住宅の事情も様々。
2回に分けてお話する「日本」と「欧米」の住宅事情の違い。
今回はその2回目となります。
2×4(ツーバイフォー)と在来工法
日本では古来より建築は木でつくり、大工さんが建てるものでした。
一方でヨーロッパでは主に石造りの家や建築が主流で、そういった建造物が長く残っていることも珍しくありません。
だからといって木の建築が皆無なわけではなく、そのなかで耳馴染がある方も多いのが「2×4(ツーバイフォー)工法」です。
起源は開拓時代の北米で、腕の良い大工や職人が少なく、建築素材も自由には手に入りにくかった頃に「できるだけ規格化された材料で、より合理的に建築できる」住宅が求められた結果生まれたものでした。
そのつくりかたは柱を使わず床や天井などと壁を組んで作るというもので、家全体が垂直面である4面の壁と水平面の床、天井の6面体で構成される箱型構造となっています。
気密・断熱性、耐火性に優れ、工期が比較的短いのが特徴ですが、窓や出入り口など大きな開口部を設けにくいなど構造に制約があることや大規模な増改築がしにくい点もデメリットとしてあげられます。
それでも耐震性については評価や信頼性も高く、地震や火災に強い家を建てたいという方や将来的に増改築を考えていない方、早く家を建てたい方にはもってこいの家のつくり方です。
一方で日本の建築で昔から受け継がれ、今なお主流となっているのが「在来工法(木造軸組稿工法)」で、日本で古くから発達してきた伝統工法を簡略化・発展させた構法です。
これは皆さんがイメージする「柱や梁を木で組んで家の骨格とする」ものですが、間取りや外壁材料、屋根の形状などの設計の自由度が高く、窓や出入り口などの開口部が大きくとれる点がメリットです。
建築基準法改正を機に、耐震性能が向上し、今でも7~8割の戸建新築はこの工法といわれています。
家の精度が大工さんや工務店の熟練度に左右されやすいことはリスクとしてありますが、家の間取りやデザインにこだわりたい方などはやはりこちらが多いようです。
より「住まいやすく」を考えて
国や地域によって気候などの条件は異なります。
その気候に対して住宅事情が異なることもまた当然のことです。
ただ、おおよその地域で注目されているのが「室温」、特に部屋の寒さが人体に与える影響の大きさです。
ドイツは住宅の断熱化に注力、イギリスでは「室温18℃以上」を推奨
気温が下がる冬場に、どれだけ心臓疾患による死亡率が増加するかを国際比較したデータがあります。
それを見るとドイツ約10%、日本約15%、イギリス約20%という数値が出ており、ドイツとイギリスは同じような気候でありながら(さらに言うなら日本はドイツより比較的気温が高い)、ドイツの数値の低さが目立ちます。
なぜドイツが「寒さによる人体への悪影響」を低く抑えられているのか。
それは「住宅の断熱性能の高さ」が貢献しているそうです。
ドイツでは1970年代におきたエネルギー危機をきっかけに、断熱や暖房装置について規定した省エネルギー法が生まれました。
そこから現在に至るまでドイツは建築物の断熱化に注力しており、法律によって壁・天井などに断熱性能を持たせることを義務づけ、歴史的建造物を除いた大半の建築物で外断熱工法が採用されているのです。
断熱改修工事に対する国の補助も充実しており、こういった断熱化住宅普及のための努力が「室温の低さ」への備えとなっていると考えられます。
またイギリスも近年「室温の低さ」が人体に与える悪影響に注目し始め、冬場の最低室温として「18℃」を推奨する計画書をまとめました。
この室温に関する基準を満たしていない賃貸住宅のオーナーには建物の改修・閉鎖・解体命令などが下されるという、かなり踏み込んだ内容の法律も制定されています。
また室温の低さや断熱性能といった「住宅の状態」と「健康に関する情報」をマッチングさせるような調査は日本でも実施されており、こうした取り組みを行っている組織に対して補助金が出るなどのサポートがある地域もあるということです。
ここまで日本と世界の住宅事情を比較した際に、あらためて考えさせられることや逆に日本の良さも気付かされます。
大事なのはそれを知り、いかに自分の暮らしに役立てるか。
家をつくるということ、もしくは直すということは大きな労力と時間とコストを要します。
今回のコラムがそういった、「住まう」ということに対して、失敗のない、満足のいくものになる手助けとなることがあれば幸いです。
参考資料
「住宅事情と住宅政策」国土交通省
「住宅の質の向上に関する各国の施策」国土交通省
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