日本と欧米の住宅事情の違いを知る その1
2018.6.19
「家」。
家族・個人・もしくはパートナーや友人などが生活の拠点とするものであり、その在り方も様々です。
国が異なれば文化が異なるように、住宅の事情も様々。
今回は2回に分けてそんな住宅事情の違いを「日本」と「欧米」に分けてお話ししていきます。
日本で家を持つ際のイメージ
私たち日本人が「持ち家を持つ」ということを考える際に、
「長期間のローンを組んで戸建なりマンションなりを購入する」
「子供はその家を引き継がず、新たな住まいを得る」
というイメージを持つことが多いのではないでしょうか。
これが世界と比較してみると、こういった考え方はだいぶ異なります。
特にイギリス・アメリカ・ドイツといった国と日本を比較しながら、その違いを見てみましょう。
家の「寿命」の違い
どんな建物も「つくられたもの」である以上、寿命があります。
家も同様で、その「平均寿命」を上記4か国で比較したとき、イギリスは約80年、アメリカは約65年であるのに対して、日本は半分以下程度の約30年という結果が出ています。
ドイツは旧西ドイツと旧東ドイツで水準がちがうので一概に言えないのですが、築年別で見た住宅の構成比率はイギリスよりも新しく、アメリカよりも古い家が多くなっています。
特にイギリスやドイツでは築100年以上の住宅が珍しくなく、中には築300年以上という家も修繕を繰り返して大切に住み継がれています。
そしてその資産価値は(丁寧にメンテナンスされていることが大前提ですが)とても高いのです。
また、日本でも最近リノベーションなどが盛んになり、注目を集める中古住宅の市場に目を向けると、新築も含めた住宅の流通数において中古住宅が占める割合はイギリス約90%、アメリカ約85%であるのに対し、日本は約15%とかなり低い割合です。
リフォームに限って見ても、ドイツ約60%、イギリス約55%であるのに対し、日本は約30%。
つまり彼の国では家を長持ちさせた上で、それが引き継がれていくような市場や文化がある一方で、日本では家を引き継ぐ・保つ文化や中古住宅市場が重視されてこなかったということが考えられます。
日本とドイツの共通点と相違点
ここで注目したいのは「戦後復興があったか否か」です。
日本に古い家が少ないのは空襲があったからだ、という意見があるとすればそれはある側面では正解で、ある側面では間違いです。
ご存知のように日本は太平洋戦争での空襲により、市街地の多くが焼け野原になりました。
しかし、規模の違いはあれ、それはドイツもイギリスも同様です。
特にドイツは日本と同じく第二次世界大戦の敗戦国で、大戦中に都市部の大半が壊滅的なダメージを受けました。
その為、戦後は急ピッチで復興を目指していく必要があったのですが、ここで政策の違いが生まれます。
日本はまず産業を再生させて国民の所得を上げ、「住宅金融公庫」を設立して「各個人にそれぞれ家を購入してもらおう」という政策をとりました。
その結果として業界内の競争が生まれ、安価で施工しやすい部材を使った「お手軽な家」が数多く建てられた経緯があります。
こういった家はメンテナンスも難しく、建てた後はどんどん劣化していくだけなので、家の寿命が約30年というのもいたしかたないことで、結果、「家を使い捨てにしている」と言っても過言ではない現状となっているのです。
一方でドイツは「社会住宅(国の低金利融資によって建てられた賃貸住宅)」を大量供給したのち、情勢が落ち着いてくると「量」ではなく「質」の向上を重視する方針へと転換しました。
現在でも各州の建築基準令や「DN規格(ドイツ工業規格)」によって住宅に使われる建材に厳しい基準がもうけられるなど、「環境先進国」と呼ばれるのにふさわしい住宅のクオリティを誇るようになっています。
無垢材家具から考える「使い捨て文化」からの脱却
こうして考えると、ある意味で家が「使い捨て」となっている現状は、そのまま日本が歩んできた「使い捨て文化」を象徴しているような気がします。
古代の昔から丁寧なものづくりを誇った日本のDNAは、戦後まもなくから現代にいたるまで脈々と受け継がれています。
そうでなければ、「メイド・イン・ジャパン」がこれほどまでに世界中で評価を得ることはなかったでしょう。
しかし、明治維新からの「世界に追い付け追い越せ」の流れと、戦後復興からの「急激な経済の成長と表面だけの欧米化」といった流れの中で、「素材を大事にする」「限りある資源と上手く付き合う」という、先人が持っていた大事な考えが抜け落ちてしまったのかもしれません。
私たち家具蔵は何世代にも渡って限りある資源である「木」を使う家具を使用して頂けるようなものづくりを心がけています。
それが「無垢材」であり「無着色」といったこだわりです。
メンテナンスを全くしなくて良いというわけではありませんが、潤沢に素材を使いながらそれを可能にすることはある意味で先程お話したドイツやイギリスの住宅と似ています。
できるだけ長く使って頂けるものをつくることが「モノを大事にする」という日本人が本来持っている文化の継承であり、また新たな文化の創出でもあります。
家も家具も長く使ってこそ愛着も湧くというもの。
そんな暮らしは今よりももっと豊かなものになるかもしれません。
そんな思いを皆様とも共有できたら嬉しく考えます。
関連リンク
https://www.kagura.co.jp/kagu/concept-1/
https://www.kagura.co.jp/kagu/concept-2/
参考資料:
「住宅事情と住宅政策」国土交通省
「住宅の質の向上に関する各国の施策」国土交通省
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