マンションの耐震構造と地震対策
2018.5.15
地震大国、日本。
諸外国と比べてもその頻度は多く、首都圏や東海圏でも大地震の可能性が頻繁に話題に上ります。
そんななかで現在、全国で進められる住宅の耐震化についてご紹介していきましょう。
今回は家具蔵でもお客様が多く、現在も各地で建設が進むタワーマンションの耐震からお話しします。
タワーマンションの地震への取り組みと違い
タワーマンションを代表とする高層マンションでは「耐震」「制振」「免震」を謳い、その対策がしっかりとられているのが通常です。
建築基準の改正により、様々な対策が練られており、それぞれに違いがあるのが特徴です。
■耐震構造(建物の設計や骨組みを地震の揺れに耐えることができるようにした構造)
建物を支える柱や梁などの構造物を、太く頑丈なものすることで、建物を支え、大きな地震の揺れにも耐える構造にしたもの。
地震が大きくなると揺れも大きくなり、壁や家具などへのダメージは避けられませんが、新耐震基準が適用された比較的新しいマンションでは、震度6強の大型地震でも倒壊しないように設計されています。
■免震構造(建物と地盤を切り離すことで地震の影響を受けないようにする構造)
建物の下にゴムと鋼板で出来た免震装置(アイソレーター)と動きを抑えるダンパーを設置し、地震の揺れを装置に吸収させることで、建物に揺れが伝わりにくくなるようにした構造のことです。
地表面の揺れが直接伝わらないため、建物は地面より小さな揺れとなり、家具の転倒や躯体の倒壊などの心配が一番少ない、といわれています。
■制振構造(地震の揺れを吸収して和らげる構造)
建物内の骨組みの部分に、地震のエネルギーを吸収する、ばねやゴムなどのダンパー(緩衝を弱める、振動が伝わるのを止める装置)等の構造を組み込むことによって、建物が受ける地震の揺れや衝撃を緩和する方式です。
耐震構造に比べると、上階ほど揺れが抑えられますが、地表面よりは小さくならないとされています。
基本的に新築のマンションはこれらの対応がしっかりなされていることもあり、また、それ以前のマンションでも耐震基準をクリアしているものであれば、実際に倒壊などで怪我等をされる方は比較的稀なケースです。
地震で起こるけがを防ぐためには
それよりも部屋の中にある家具の転倒などでのけがが多く報告されており、阪神・淡路大震災時に建物の中でけがをした人の約半数(46%)は家具の転倒、落下が原因だったという調査結果があります。
これにガラスの飛散によってけがを負った人(29%)を加えると、実に4分の3の人たちが家具やガラスで被害を受けたことになります。
同時に阪神・淡路大震災では、震度7の地域において約6割の部屋で家具が転倒しています。
家具の転倒に関しての被害の大きさを感じさせる数字ですが、この転倒により以下のような問題が発生しています。
・逃げ口が塞がれる ・飛散物でけがをする ・下敷きになってけがをする
つまり、家具をしっかりと留めて、ガラスの飛散防止対策を施せば、震災時に多くの方がけがをしなくて済み、建物の外に出ることの障害も減るようになります。
この二つの対策をすぐにも徹底すべきなのですが、実際には一般家庭で家具の転倒やガラスの飛散の防止対策はまだまだ進んでいないのが実情のようです。
これはひとつに知識や情報の不十分さが徹底した対策に繋がっていないことが要因のようです。
対策を講じるのに掛かる費用や手間も大きな障害になっているかもしれません。
私たち家具蔵も家具を販売する上でこのような危険性や対策に関してしっかりとお伝えをすることは、多くの危険と不安を取り除く大切なポイントになり得るかと思います。
その対策に関して以下にまとめました。
「L型金具」
耐震グッズとしては一番ポピュラーなタイプです。
長所、短所が明確で環境に応じて使用できる・できないがあることはポイントです。
長所:強度が一番高い。
短所:壁側に穴を開けなければならない(=賃貸住宅は不可)。石膏ボードだとビスが効かず、芯材が入っているところしか設置できない。
「ベルト式器具」
家具と壁をそれぞれネジ止めした金具をベルト、金属チェーン、ワイヤー等で結んだタイプ。
長所:転倒防止効果が高い。
短所:L字金具同様、家具、壁面の取り付け部分や器具自体に十分な強度が必要。
「ポール式器具」
ネジ止めすることなく、家具と天井の隙間に設置する棒状のタイプ。
長所:取り付けが容易で道具も必要ない
短所:天井の強度が弱いとズレてしまったり、破壊してしまう恐れがある。
「ストッパー式」
家具の前下部にくさび状に挟み込み、家具を壁側に傾斜させるタイプ。
長所:安価、設置が簡単
短所:単独使用では転倒防止の効果は低い
「粘着マット」
テレビやパソコンの転倒防止として、揺れを吸収するジェル状のマット。
長所:壁や床に傷をつけることなく設置ができる。安価。
短所:あくまで制振の役割なので、急な揺れや大きな揺れなどへの対応力が弱い。
見た目の問題などもありますが、これらの耐震グッズを効果的に(2つ同時に取り付ける等)使用することで、より強固な対策が練られます。
建物の状態や壁の構造などを考慮しながら、その家具に応じたアイテムを活用していくことが必要となります。
耐震グッズの活用に関しては、あくまで「予防」の範疇を超えないものでありますが、その必要性や知識を持ち、実践することで、いざというときに役に立つことは大いにあるでしょう。
今回は耐震に関すること、またそれにまつわるグッズについて取りまとめました。
今回のコラムが皆さんのお役に立つものであれば幸いです。
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