室内環境とその調整 -音-
2017.10.16
当コラムで不定期的にご紹介している「室内環境」。
この室内環境を快適に保つことが、そのまま快適な暮らしに繋がるわけですが、今回はこれも皆さんの生活には身近な「音」についてお話していきます。
音の定義とその性状
そもそも「音」の定義は一般に空気中を伝わる縦波(たてなみ・粗密波とも言います)のうち、人間が聴くことのできる範囲のことを指します。
しかし、音の発信地=音源から人間の耳に到達するまでには液体や固体のなかでも振動は伝わります。
(ですので、建物や室内ではいわゆる躯体を伝わる音が問題になることも少なくありません)
空気中を伝わる音は秒速約340mで進み、光と同じように屈折したり、反射したり、吸収されたり、または透過したりします。
音には3つの属性があり、一般には「強さ」「高さ」「音色」と呼ばれています。
このなかで「強さ」は複雑な単位と定義で計測され、それをわかりやすくした単位が「デシベル(db)」となります。
ちなみに「ゼロdb」は人間の聴力の限界であり、これを基準として音の強さは表現されます。
よく「この騒音の度合いは○デシベル」といった表現を聞くことがあると思いますが、これはゼロdbを基準とすることでその比率を現したものということです。
また、音の「大きさ」の単位には、「ホン」が使われます。
いわゆる騒音計はこの単位が使われることもあり、例えば木の葉の触れ合う「カサカサ」という音やささやき声などは20?50ホン未満で非常に静か、もしくは特に気にならないレベルであり、電車の車内などは80ホンで無視できないレベルの音、ガード下などは聴力の低下をもたらす確実な騒音レベル(=100ホン)となります。
ただし、騒音レベルが高いからといって、必ずしもそれがうるさく感じるとは限りません。
誰しも聴きたい音と聴きたくない音があり、それは好みや場所、気分によっても異なります。
公共の場や職場で感じる音の違いにはこうしたことが作用しているのです。
防音には遮音と吸音がある
そうした「音」が自分と周囲に与える影響をなるべく少なくすることが現代の暮らしに必須になっています。
特に住宅においても自宅から出る音を極力周囲に影響させないことは、隣家や近所の暮らしに配慮しながら、自分の楽しみや暮らしのリズムを守る手段として、たいへん重要なものとなっています。
それを総じて「防音」と呼びますが、そのための大きな要素が「遮音」と「吸音」です。
「防音」は、外の音が室内に入ったり、室内の音が外に漏れたりするのを防ぐことを意味します。
具体的な方法論ではなく、総合的な概念であると考えてもらえればよいでしょう。
そして、実際に「防音」するための具体的な対策として、「遮音」と「吸音」があります。
防音対策、防音素材と言われるものは、実際には遮音もしくは吸音を機能させる対策や素材のことを指しているのです。
遮音とは周囲のものを透過する音を少なくすることであり、吸音とは反射する音を少なくすることですが、これをもっとわかりやすく説明していきましょう。
遮音がどうやって防音となるのかというと、簡単に言えば「音を跳ね返すことで、音を遮断する」というものです。
外に漏れる音が小さいほど「遮音性が高い」ということになります。
音を跳ね返すので、遮音性が高すぎると室内で必要以上に音が反響してしまうリスクもありますので注意が必要です。
結果として音が聞き取りにくくなったり、聞こえる音そのものが元の音と変わってしまったりする場合があります。
遮音素材として代表的なのは、鉄板やコンクリート、比較的安価な石膏など。
これらの素材は遮音をするために優れている素材ではありますが、重量や費用の面から施工効率は良くないと言われることもあります。
一方、吸音は音を「吸収」することで、音が室外に透過することを防ぐ、もしくは音を発している室内における音の反響を抑える方法を指す言葉です。
細かい穴がたくさんある素材が音を吸収し、その中で拡散させるものであり、吸収によって反射する音の大きさが小さければ小さいほど、吸音性が高いという評価になります。
外に音が漏れず、かつ室内でも音がクリアに聞こえるのが特徴です。
代表的なのはグラスウール・ロックウール・ウレタンフォームなどがあります。
ただ、こちらも吸音性を高めすぎてしまうと、反響音が少なすぎて味気ないと感じてしまうケースもあるようなので、どちらも並び立たないところが難しく、遮音・吸音のそれぞれの素材の組み合わせが重要になってきます。
また、住居では音の出入りは断然開口部が多く、特に「窓」に対して防音対策をとる家庭も増えています。
そのために窓やサッシの隙間を埋めることが効果的であり、新築では隙間の少ない防音用サッシを選択する方も多く、また、リフォームやリノベーションでは、今あるサッシはそのままにして、その内側(室内側)に隙間の出難い後付けタイプの二重窓を設置する方法をとることもあります。
音の問題はとても身近で、且つ実はとても真剣に考えなければいけないもの。
日常の生活の中で音が原因になったトラブルは非常に多く、あらゆるジャンルでこの「音」に配慮した提案や商品が多く世に出されています。
その一方で心地良い音がある生活を求められているのもまた事実。
木材にも、低音・中音・高音をバランスよく吸収する働きがあり、室内に木材を使用した場合、不快な雑音が吸収され、音がまろやかになる結果が出ています。
多孔質であり、目には見えないレベルの細かい孔がそのメカニズムですが、優れた音響効果を要する劇場やコンサートホールに木材が使用される理由は、こんなところにもあるのです。
関連リンク:
https://www.kagura.co.jp/point/03.html
https://www.kagura.co.jp/case/interview/4.html
https://www.kagura.co.jp/case/interview/6.html
参考文献:彰国社刊 小原二朗・加藤力・安藤正雄編「インテリアの計画と設計・第二版」
彰国社刊 壁装材料協会発行「インテリア学辞典」
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