室内環境と室内計画、その歴史と現代の暮らし
2017.6.27
我々人類は、その長い歴史の中で様々な工夫によってより快適で、安全に暮らす事のできる空間を造り上げてきました。
雨風をしのぎ、外敵から身を守ることを目的とした原始的なものは次第に装飾性を増し、その土地や国単位の文化の中で様々なかたちと在り方をつくることとなります。
今回はそんな生活空間について、ちょっと堅めの内容にはなりますがご案内していきたいと思います。
人間生活と人工環境
私たちは複雑多岐に構成された、人工的な環境(=人工環境)のなかで様々な生活を営んでいます。
この人工環境は絶えず新しく計画されたり付け加えられたり、また破棄されたりしながら変化していきますが、この最初の形成は、まず自分たちの手で住居をつくる、ということから始まったものでした。
それは洞穴であったり、木々の間を利用したものであったり、といった簡単なものから始まったのですが、やがて次第にほぼ平坦な床面を持つ自立した構造の住居へと進化を遂げていきました。
勿論、そこには「生活を守ってくれる」というシェルターとしての役割があったわけですが、そうした流れの中で安心してぐっすり眠れる寝床の確保や、可能な限り大切に保護をしなければならない木の実や薬草の採取場や保管庫、もっと進歩して農耕地、というようにこの人工環境は多岐にわたるものでありました。
言い換えれば人工環境とは
「人間によって何らかのコントロールを加えられ、それによって何らかの利益・利便を享受できると期待されるものの集まり」
ということになります。
この「期待」はいつしかなくてはならない「必然」となり、この必然を達成するための「計画」が重要になっていくのです。
室内計画とインテリアデザイン
原始的な「計画」はいかに生活を確保するかということを目標にしたものでしたが、人類の文化が進んでいくと、この「計画」は多様な意味を持つようになります。
そのひとつがインテリアデザインです。
インテリアデザインとは、「室空間を区切りとした空間の計画である」と言い換えることができます。
住宅や建築は人間の生活の受け皿・容器としての空間性をひとまとめとしたものであり、各所は相互に関連づけられて計画されています。
人間が生活する場所ですから、心地よく、且つその時代性に合ったものでなければなりません。
したがって室内計画もまた、家具や装飾だけではなく、建築そのものを含めたすべてが相互に密接に関連しており、その構成は特に日々の暮らしや地域の文化・風土など、様々な部分できめ細やかに関係づけられるものであるのです。
例えば、中世のヨーロッパでは「バロック(1600年代?1750年代のヨーロッパ諸国の宮廷を中心に拡がった様式。絵画や彫刻、音楽などの芸術から建築・庭園など幅広いジャンルを総括した一大ムーブメント。ここでは建築における特徴としてドームや柱に絵画的なものがあることを指す)」から「ロココ(女性的で自由なデザイン。曲線を描いて天井と繋がる壁や、建築に鏡が多用される、曲線状の家具、といったところが特徴的)」へ移っていく時代に、サロンを中心とした儀式的な生活が中心となり、それに合った空間の使い方が重視されるようになりました。
その為、室内もまたそれに対応して、いわゆるロココ調のインテリアが生まれた経緯があります。
それは、それまでの儀式的な大仰な暮らしから、くつろいだ雰囲気の中、少人数で普通に暮らす、といったことへの回答であり、その時代ではそのニーズにふさわしいかたちであったのです。
日本ではその昔、扉によって個室を仕切る風習は無く、戸襖や障子などが空間を仕切り、また必要に応じてそれを開放して空間の目的を変えるスタイルが主流でした。
比較的過ごし易い気候にあり、季節の変化を愛でることができるという国民性がそうさせたのですが、建築の洋風化が進み、団地やマンションなどの集合住宅の選択肢が段々と大きくなっていくなかで、一つ一つの空間は扉や壁によって完全に仕切られるようになりました。
それは、今までプライベート性というものがあまり無かった日本の家屋へのアンチテーゼや、小型家電の充実といった側面もあったかもしれません。
それ自体もやはり時代の流れであり、快適に日々を過ごすための「必然」を「計画」し、実行するうえで必要なかたちであったのでしょう。
そして2017年の現在、「リビ充(家族)」という言葉が世の中には出始めました。
いまやLDKが一続きの空間になっていることが多い現代の住宅事情。
そのなかでいわゆるリビング空間を充実させ、多くの時間をそこで過ごす家族や時間のことで、「リビング充実家族」の略したものとなります。
共働きや在宅勤務の増加を背景とし、個室を小さめにし、多機能空間としてリビングを広げた住宅では、リビングスペースで家族それぞれが思い思いに過ごすスタイルが増えてきているとのことです。
これも働き方や家族の在り方などが多様化する中で、「家族」という単位を大事にする流れが出てきた時代の要請であり、タブレットやスマートTVをはじめとしたIT家電の充実、「連帯感や一体感」を大事にする親子関係の変化があるのでしょう。
こうして見てみると、住宅や生活の在り方の歴史にも様々な深い要素が隠れていることがわかります。
今回のコラムはいかがでしたか?
次回の掲載をまた楽しみにしていてくださいね。
参考文献:彰国社刊 小原二朗・加藤力・安藤正雄編「インテリアの計画と設計・第二編」
彰国社刊 壁装材料協会発行「インテリア学辞典」
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