一枚板テーブルができるまで
2020.10.10
「一枚板テーブル」と聞いてどんなイメージを持ちますか?
家具蔵にご来店されるお客様からは「存在感があって素敵」「憧れ」という意見を多く頂きます。
ダイニングテーブルになるような一枚板は、一般的なダイニングテーブルの奥行(約800~900ミリ)以上の直径になる巨木である必要があります。
そんな巨木になる木はざっと百年以上もの間、大地に根を張り生き抜いた木です。
そしてテーブルになるためには、私たちが暮らす現代の住環境(冷暖房等の乾湿の差など)に耐えうる耐久性を兼ね備えていなければなりません。
では一本の木がテーブルになるまで、どんな過程をたどるのでしょうか。
今日はそんな一枚板テーブルができるまでのお話です。
伐採から選定まで
風雪に耐え、何十年何百年と悠久の時を生きた木。
美しく良質な木を育てるため何世代にも渡って木を見守っている山の仕事人たちが手塩にかけた木々は成熟の時を迎え、伐採されます。
伐採は主に秋から冬にかけて行われます。
樹木の活動が落ち着き、幹の中の水分や樹液が少ない状態になるのを待つのです。
伐り出す瞬間はまるで厳かな儀式のようです。
こうして山からおろされた原木は厳しい職人の選定眼によってふるいにかけられます。
最高の一枚板テーブルを作るには、最高の原木と出会わなければなりません。
山からおろされた原木は、家具蔵の中でも一番の目利きの職人が現地まで赴き、太さや節の有無、年輪の幅、曲がりの大きさ等を丸太の状態から見極めます。
それでも、職人の目にかなうような状態の良い良材と出会えることはごくわずかです。
そうしてようやく出会った原木とどのようなテーブルになるかと思いを巡らせながら選定を行っています。
製材
製材前に、丸太になった原木の皮部分についた土や小石をよく掃き落とします。
製材時の刃の切れ味によって材の良し悪しが決まってしまうため、小石などが刃に当たってダメにしてしまわないようにするためです。
固い広葉樹の中には予想外のもの、例えば狩猟に使うライフルの弾が埋め込まれていることもあるのだとか。
そのまま製材機の刃に異物が当たってしまうと刃が欠けてしまいます。
細心の注意を払う必要があるのです。
丸太の「コブ」「ナリ」の状態で木の性質を見極めることも大切です。
木目を予測しながら板の厚み・角度を決め、慎重に挽き方を決定します。
家具に最適な良材になるのか、それともただの木屑となるかはこの作業次第です。
熟年の職人でさえ手に汗を握り現場には緊張感が漂います。
職人の経験と勘が、その木の運命を左右するのです。
乾燥
製材された板は家具蔵の自社工場のある茨城県常陸大宮市の豊かな自然の中で、光や風にさらされながら、自らに蓄えた水分を発散します。
含水率が12~13%になるまでゆっくりと自然乾燥させるなかで、この期間は板と板との間に桟棒を入れ積み重ねて保管します。
これは板同士が残った水分で腐ったり、乾燥度合いにばらつきが出たりしないようにするためです。
さらに、木が現代の気密性の高い室内で、エアコンや床暖房などにさらされることを考慮し、含水率が6~7%になるまで機械乾燥と養生を行います。
原木のまま、丸太の状態で材料を仕入れてくるのであれば、たくさんの一枚板が取れそうだと思うかもしれません。
しかし、長く厳しい乾燥によって、板がよく割れてしまいます。
1本の丸太から1枚も一枚板が採れないこともよくあることです。
宝石の最高峰であるダイヤモンドもその原石の発掘から、長く精密な工程を経て美しい輝きを放ちます。
一枚板も同じです。
グレードの高い大木を選び抜き、手間暇をかけて愛でるように、磨くようにして、あの美しい木肌が生まれまるのです。
それまでには想像を絶する時間と手間が必要となります。
仕上げ
素材の持ち味を十二分に活かすのが職人の誇り。
木の材質や自然形状に合わせていくつもの道具を自在に使いこなします。
例えばカンナ掛け一つにしても、削る場所や木材に合わせて大小数種類を駆使。生産性を重視して機械化が進む中、あえて手仕事でこの工程をおこなう理由は、実際にテーブルを触れることで知ることができます。
どこを触っても滑らかで、思わず両手いっぱいに撫でまわしたくなる触り心地。
天板の表面からは木のごつごつとした強さより、すべてを包み込む温かさを感じることができます。
これも職人の技あってこそのもの。
「毎日使う家具だから触れると安心できるものを」
「毎日目にするものだから使うのが楽しみになるものを」
職人の思いが伝わります。
こうして熟練の職人たちの技により生まれ変わった木は、天板となって第二の人生を歩み始めるのです。
一枚板を眺め、手に触れながら、こうした板になるまでの木の歴史を想像してください。
世界に1つだけの暮らしのパートナーとなるテーブルと出会えることでしょう。
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