なぜ現代のキッチン収納は引き出しが多いのか
2023.4.8
ライフスタイルとともに住環境も大きく変わるなか、キッチンも細かい進化を積み重ねながら使い勝手もデザインも使う人の事情に沿った様々なスタイルが存在します。
キッチンの歴史については、度々この家具蔵ブログでも掲載していますが、冷蔵庫が無かった時代、食材の鮮度を保つために北側にあることが当たり前だった『台所』も、冷蔵庫・冷凍庫の誕生も手伝って今では家の中でも中心に位置する空間になっています。
その他にも進化はいろいろあり、
「料理だけをするためにこもる空間から、家族との対話も楽しむオープンな空間に」
「大きなシンクではなく、食洗機+シンクに」
「ガスコンロだけでなく、IHも選べるように」
「夫婦共働きでも、自動調理家電を使いなるべく時短に」
「来客に備え食器の数も多く収納はとにかく大容量という考えから、できるだけ持つものは少なく必要な分だけに」
など、時代に合わせてキッチンについての考え方やキッチン自体の在り方も大きく変わってきています。
その中でも、今回はシステムキッチンの収納部の仕様について取り上げていきます。
キッチン本体の収納は扉タイプが主流だった時代
これまでのキッチンの進化の歴史を振り返ってみると、同じ作業をする場合でもとりわけ『時短』というキーワードが常に付いて回ります。
夫婦共働きが当たり前の世の中で、少しでも家族との時間を有意義に過ごすためには、家事が効率よくできるということが欠かせません。
近年のキッチンはオーダーキッチンの場合でもシステムキッチンを選ぶ場合であっても、多くのキッチンの収納部は引き出しタイプになっています。
システムキッチンという文化が日本に入って来て数十年が経ちますが、当初の収納と言えば扉タイプが主流で引出しは一部にしか採用されていませんでした。
海外の様なシステム化されたキッチンが入ってきたばかりの頃、その価格は150万~300万くらいと物価も違うその時代においては高値の花でした。
それを一般家庭にも広く広めたのがシステムキッチン大手のクリナップで、「買えちゃうシステムキッチン」として45万円まで価格を下げたことはエポックメイキングとなったのです。
天板のサイズを限定したりキャビネットの組み合わせも絞り込んだり工夫をするなか、扉タイプのキャビネットにすることもコストを抑えられた理由です。
キッチン収納の引き出しタイプへの変化
では引き出しタイプが出てきたのはいつ頃なのでしょうか。
具体的に「この年からガラっと変わった」というものはありませんが、システムキッチンのカタログなどでも引き出しタイプのキャビネットを多く見かけるようになったのが20年ほど前です。
キッチンに求められるものが価格から機能性へと変化し、そうした時代背景に伴って扉から引き出しへと自然に変わっていったことを表しています。
核家族化が進み、更には女性の社会進出により家事には効率性がより求められるようになりました。
キッチンについても例外ではなく、電子レンジの活用術や炊飯器で2品同時に作れる調理法などがテレビや雑誌でも時短に繋がるアイデアがたくさん紹介され、いかに効率よく家事をこなすことができるかという点については今でも様々なメディアで散見されます。
キッチンの収納についてもより見やすくて取り出しやすい収納法が様々工夫され、紹介されてきました。
キッチンキャビネットの使い方も、ただ量を収めるというだけでなく、使いやすい場所にいかに出し入れしやすく収納するかという事が求められるようになっていったのです。
イニシャルコストももちろん大切ですが、使う中での作業効率・時間効率を考えたときに、それを上回るコストパフォーマンスを選択する人が増えた結果として、扉よりも引出しを選ぶ方が主流になってきたと言えるでしょう。
そしてこの20年の間でも、引き出しの内部をより使いやすくするオーガナイザーや台輪部分まで収納にできるフロアコンテナなど、引き出しタイプの中でも確実に進化が見られます。
引き出しタイプのメリットとは
では引き出しタイプの収納のメリットは具体的にどのようなものがあるでしょうか。
●屈まずにモノを出し入れができること
●一度に中が見渡せ収納物が把握しやすいこと
●高さ方向も有効に使えるため、内部が有効的に使えること
大きく分けてこのようなメリットがあります。
また中のものを出し入れする際の動作も少なく、扉タイプの場合は、「かがむ→扉を開ける→手前の物を一旦出す→必要な物を取り出す→手前にあった物を戻す→扉を閉める→立ち上がる」と、一つの物を取り出すだけでも、様々な工程を踏むことになりますが、引き出しの場合は「引き出しを開ける→取り出す→閉める」と3つのステップで完結します。
引き出しタイプで気をつけるポイントは
引き出しタイプの収納は便利ですが、すべてが万能というわけではありません。
予め次のようなところも理解した上でお選びいただきたいところです。
例えば
「引き出しの奥にガス管や給水・排水の配管がある部分については奥行が浅くなること」
「ソフトクローズでも勢いよく閉めると中の物が動くこと」
「シンクの手前に手拭き用のタオルを掛けたい場合、位置によっては引き出しの開閉の際に挟まれてしまうこと」
「キッチンと背面収納の間が狭い間取りでは使いづらくなること」
「意匠性を重視して引き出しの幅を大きくした場合、内部の仕切りを作らないと煩雑な収納になってしまうこと」
「同じく幅広の引き出しの場合、ビルトイン浄水器のカートリッジ交換などの際に引き出しを抜くのが大変になること」
「二人でキッチンに立つことが多い家庭の場合、横並びの作業時に幅広の引き出しはかえって邪魔になること」
などはあまり深刻に考えないまでも頭に入れておきたいポイントと言えます。
キッチンは使う人の家族構成や性格、年齢や料理の頻度、収納物の多い少ないなどでも、合う仕様・使いやすい形が変わってきます。
また、今の暮らしだけでなくこれからの生活も踏まえた上である程度の「余白」も考慮しながらプランすることが必要です。
これから新築やキッチンリフォームを考えるという時には、色々な意見を参考にしつつプロにも相談をしてみてください。
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