長年使って、あらためて感じる
計算されたフォルムとデザイン
vol.09 ハードメープルのリビングダイニング 東京都 池田邸
10年前、灘建築研究所の設計でコンクリート打ち放しの新居を構えた池田さん。家具蔵との出会いは、建築家の紹介だった。当時、リビングにと購入されたテーブルは、この家で生まれたかのような顔をしてすっかりと馴染んでいた。おまけに、同じハードメープルで揃えられたピアノが兄弟のように置かれている。「テーブルに合わせてこのピアノを見つけたんです。5年前から、家族でピアノを習い始めたんですが、私が一番上達してないですね」と苦笑するご主人・修三さん。さっそく長男・峻之さんが軽やかなジャズを弾いてくれると、和やかな春の休日にピアノの音色が流れて、空気まで踊りだしたかのように華やいでくる。 1階の硝子工房では、大学教員で、硝子の指輪作家でもある奥様・千登勢さんが硝子工芸教室を開講。生徒さんと一緒のランチタイムもこのテーブルだ。「家にはソファがないんですが、この椅子がとても座り心地が良くて、家族もお客さんも、みんながここで寛いでいます」と、千登勢さん。実は、池田さんはこのアームチェア“ヴォーグⅡ”の購入前に、すでにデンマークのデザイナーズチェアを予約。しかし家具蔵でテーブルの打ち合わせのたびに座っていたチェアを気に入られ、購入を決めた経緯があった。「ここで5時間位座って仕事をすることも多いんですが、全然疲れない。テーブルも椅子も、使うほどに、計算されつくして作られていると感心します」。大学でユニバーサルデザインの授業を持つ千登勢さんの言葉に、家具たちも少し誇らしげに見えた。
※文章中の情報は取材当時のものです
この空間のためだけに決められた、絶妙なテーブルサイズ。家具蔵では、部屋に合う寸法や樹種、デザインをプロの視点で提案してくれる。
絶妙な曲面を描くアームチェア“ヴォーグⅡ”。板座の感覚を忘れるかのように時が流れる。 「人の団欒」にメープル独特の艶っぽさが程好く溶け込み、和やかな空間を演出している。
10年前の様子。存在に違和感をもたらさないピュアな無垢の家具は、経年によって更にこの場所に馴染んでいく。
完成度の高いRC構造の建築にハードメープルの存在感が調和した、スタイリッシュなリビング。コンクリートの壁に架けられた絵画が彩りを添えている。 天窓から射す日差しは、日時計の役割も。
天窓の上から見下ろしたリビング。 住宅設計:灘建築研究所(一級建築士事務所)047-478-9405
ウインドウフレーム越しに見る家具は、眺めるだけでも美しい。語らいの声が今にも聞こえてきそうな温かみのある空間だ。
工房での講義風景。 「硝子は熱い炎に溶かされ、氷のように輝く美しい素材」と、千登勢さんは硝子の魅力を話してくれた。
千登勢さんの硝子の指輪「草原の白ウサギ」。イマジネーション溢れる作品の数々はこの環境から生まれていく。やさしさがにじみでるglass art に多くのファンが集い、教室も賑わいをみせている。
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